PROJECT DATA
「白川村の蔵」6次産業化で村の風景を守る酒蔵開発
開発プロジェクト総工費18億円のうち、4.5億円を寄附で調達するファイナンススキームを構築
- エリア
- 大野郡白川村
- 対応期間
- 2020年~
- 事業内容
- 企業版ふるさと納税マッチングサービス「CoLoRs」/クラウドファンディング型ふるさと納税メディア「ぎふちょく」
地域の概要
人々の暮らしの結びつきが支える
世界遺産・白川郷の美しき姿
岐阜県の西北端に位置する白川村。伝統的な合掌造りの集落が世界遺産に登録されており、暮らしの中で守り育まれてきた貴重な文化や、四季折々の美しい景観が魅力です。

相互扶助「結(ゆい)」で支えられる合掌家屋の屋根の葺き替え
人口およそ1,500人の白川村には、一日あたり5,000人、年間200万人を超える観光客が訪れています。
住民のうち7割が観光産業に従事。約96%が山林、農耕地は0.4%という山村にあって、専業農家はとても少ないのが現状です。

課題
押し寄せる、平均滞在わずか40分の観光客と
消える農村風景
白山連峰をはじめとした急峻な山々に囲まれた白川村では、日照時間も短く、決して農業として豊かな生産力を持った場所とはいえません。農耕のほかに山林樹木の伐採・搬出や、18、19世紀には合掌家屋の構造を生かし農業の副産物を活用した養蚕業や煙硝製造などが家内制手工業として行われていました。

現在の集落では、養蚕も煙硝製造も行われていません。稲作は行われていますが、農家の所得が決して高くはない現状において専業農家は非常に少なく、村の人口自体も21世紀には平均で年間20人ずつ減り続けている状態。耕作放棄地も増えて農村風景が消失しつつある状況を何とかしなければならない、と白川村も危機意識を持っていました。
一方、村民の7割が従事する3次産業である観光にも問題がありました。当社が以前に行った「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の際にも明らかになった、観光客一人あたりの滞在時間が平均わずか40分であるという事実。40分では地域経済が回りません。
一般的に、滞在3時間を超えると観光消費をするといわれていますが、白川郷観光は日帰りに特化した仕組みで進んできたため、滞在時間が伸びず、村内はたくさんの観光客があふれかえって大忙しにもかかわらず、実は村内での観光客による消費がそれほど多くはないのです。

白川村の「本通り」に集中する観光客(引用元:https://www.japanbullet.com/ )
村内に「酒蔵」をつくるために
立ちふさがる3大問題
上述の問題を解決する糸口として、村では以前から日本酒の「酒蔵」を誘致したいという構想がありました。酒蔵があれば、1次産業として村内の田んぼで農家が酒米を育て、2次産業としての製造業の過程で酒蔵がその酒米を買い上げることで、農家は普通の飯米を作るよりも高いお金で買い取ってもらえる経済を作り出すことができるということ。
そして“白川郷の米を使って、白川郷の酒蔵で作った清酒”を、3次産業である観光業において提供できることで、観光客の滞在時間を延ばして経済を回すことにもつながり、同時に観光客の満足度向上という効果も期待できます。

しかし、村内に酒蔵を誘致するにあたって以下の問題がありました。
| 3つの問題
1. 応じてくれる酒造メーカーがあるのか |
長年この3つの問題が大きな壁となって解決しないまま、観光(3次産業)への過度な依存と、農林業(1次産業)の担い手不足が深刻な課題でした。
解決策
飛騨地方は岐阜県北部に位置し、白川村と高山市、飛騨市、下呂市の3市1村で構成されます。飛騨地方全域では12の蔵元がありますが、白川村内にはゼロ。
白川郷といえば秋の「どぶろく祭り」が知られますが、これは地域住民が祭礼の神酒として各神社の酒蔵で限定的に醸すものであり、事業として販売できるものではありません。

どぶろく祭り
清酒の醸造に関しては、白川村の村史を紐解いても明確な記述はなく、どうやら近代以降、少なくとも近代以降ここ100年間は造られていないということがわかりました。
岐阜県最大の清酒メーカー「渡辺酒造店」に打診

蓬莱 渡辺酒造
白川村内に酒蔵を誘致するにあたり、請け負ってもらえる企業を探すこと。これが当社がこのプロジェクトに参画した最初の仕事となりました。
まず取り組んだのは、県内最大の清酒製造会社である「有限会社 渡辺酒造店」さんに「白川村に来ませんか」とお声がけをしたこと。渡辺酒造店は飛騨市古川町に本社があり、銘酒「蓬莱」で知られる蔵元です。「ぜひ、白川村の力になりたい」と承諾していただき、これで1つ目の問題であった“誰がやるか”は、内定することができたわけです。
2020年のことでした。当社はこの時点からずっと伴走しています。
次につづく、許認可と費用に関する2つの問題解決はとても難しいものでした。
まず、酒税法における製造認可の問題については、飛騨高山出身で当時、国の地方創生コンシェルジュで、東海財務局の南部寿美雄さんにお力添えをいただき、認可取得に向けた一定の目処がつきました。
事業費18億円の半分を
返済不要の資金で集める
酒蔵を誘致するこのプロジェクトには、およそ18億円の事業費がかかります。しかし、その誘致される酒蔵で一年間に見込める売上げは数億円。また、豪雪地帯ゆえに屋根の積雪荷重対策など建築コストも大きくかさむため、ビジネスとして採算性が高いものでは到底ありません。
当時の白川村の年間予算からこの費用を捻出することも、渡辺酒造店が単独で負担することも現実的ではありませんでした。
そこで相談を受けた当社は、およそ半分の9億円を返済の必要がない資金で調達する戦略を立案。企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税を活用して寄附を募り、国の交付金も合わせてその9億円を確保する目標を設定しました。2023年のことです。
成果
企業版ふるさと納税14社の仲介などにより
プロジェクトを進める資金調達に成功
企業版ふるさと納税に関しては当社が事業として仲介を行っており、これまでに14社1億2,900万円の寄附を白川村につなげました。個人版ふるさと納税では全部で7億円超が集まり、その40%(約2.8億円)がプロジェクトへ投入できる仕組みとなっているため、無事に寄附で4億円を集める目標を達成。プロジェクトの資金調達が概ね整いました。
資金調達の成功を受け、村内では2027年春の竣工に向けて酒蔵の建設が始まっており、「白川村の蔵」公式SNSでは建物の躯体が建っている様子などがすでに報告されています。また、白川村内で酒米・山田錦の栽培も始まっています。
今後、酒蔵完成から醸造開始まで、当社は引き続き伴走を続けます。

「白川村の蔵」完成イメージ

