PROJECT DATA
DMO候補法人「中津川市観光局」その設立から解散まで
6年間の伴走記録と、観光まちづくりの難所解明、今後の展望
- エリア
- 中津川市
- 対応期間
- 2020年~2025年
- 事業内容
- 観光マーケティング(DMO)支援事業
地域の概要
地域ごとに固有の文化と歴史を誇る中津川市
中津川市は岐阜県の東端に位置し、現在の人口は約70,000人。馬籠宿、付知峡、苗木城など、複数の観光見所を有しています。「リニア新幹線」開通の際には、中津川市にリニア岐阜県駅が設置されることが決定しています。
2005年に越県を含む1市7町村が合併した後も15年間、各地6つの観光協会は統合に至らず、それぞれに活動する状態が続いていました。コロナ禍で落ち込んだ観光客を呼び戻し、リニア開業を見据えた観光地づくりを推進するため、私たちは観光協会一本化の合意形成に向けて伴走しました。
2年間にわたる伴走を通じて、地域全体で行う持続可能な観光地づくり(サステイナブル・ツーリズム)の指針として「2030年ビジョン」とそれに紐づくアクションプランを策定。6観光協会で合意ができました。
その結果2022年3月、中津川市内に点在する観光協会6団体[中津川、馬籠、やさか、付知、蛭川、加子母]をまとめる一般社団法人「中津川市観光局」が発足。
ところが4年間の活動ののち、2026年3月に解散に追い込まれました。

苗木城

馬籠宿

付知峡
課題
問われる観光まちづくりの在り方
当社はDMO(Destination Marketing/Management Organization:観光地経営の司令塔となる組織)機能を担う「中津川市観光局」のCFO(最高財務責任者)として、地域の観光地を発展させるための財源形成に向けてサポートを進めていましたが、人件費などの費用は中津川市の一般財源から支出されていました。
解散に至った根本には、観光まちづくりの在り方が問われていると考えます。
人口急減期にあって先細りの財政を背景に、必要な行政サービスも多岐にわたるなか、「観光」というものは一般的に広く市民が受益するものではありません。
中津川市のメイン産業は製造業。観光業に従事する人口の割合は多くありません。観光以外に携わる市民にとっては、市が観光に投資することに直接的な受益がないという認識になります。観光推進が進むことによってベネフィットを得るのは、市民ではない観光客ということです。
市民税を使って、市外の人たちのための環境整備をすることが果たして許されるのかーー
これが、観光まちづくりを推進するうえでの難所、隘路(あいろ)です。
まちづくりは財源開発からーー
これは当社が掲げるスローガンでもありますが、中津川市ではまさにこの点が、DMO推進におけるチョークポイントになってしまったということです。
解決策
一般財源に依存しない観光まちづくり財源の開発―宿泊税(法定外税)
当初の計画で2027年とされていたリニア中央新幹線岐阜県駅の開業ですが、現状では大幅に遅れ、あと10年ほどは先になると見込まれます。それに向けて、持続可能な観光まちづくりを推進するため、市民税に依存しない財源として切り札になり得るのが、「宿泊税」です。
岐阜県内では2025年4月から高山市、下呂市、2026年4月から岐阜市が導入。全国では2026年4月に導入自治体が倍増し、その数39となっています。新しく税をつくるには総務省の同意が必要ですが、その同意を得られる水準もおおむね明らかになっています。
一方で、日帰りが多く宿泊が少ないエリアにおける財源確保については、宿泊という行為に課税することが難しいため、引き続き検討課題の一つです。
成果
以下は、当社が務めた中津川市観光局CFOとしての実績をアーカイブしたものです。
01|2026年に築城500年を迎える苗木城駐車場の一部有料化
中津川市の三大観光地の一つである苗木城跡には、2022年当時、岩山に廃城となった石垣などが残るのみでキャッシュポイントゼロの状態。市民ボランティアの協力に頼る部分が多いのが実情でした。そこでまずは駐車場の一部有料化を目指し、2022年秋に実証実験を実施。
協力金の呼びかけやアンケートを行い、利用者の9割が協力金の支払いの意思があることを確認できました。そのうえで、市役所が市営駐車場として整備を進め、2025年度から有料駐車場をスタート。
年間数百万円の駐車場収入が得られ、持続可能な観光地を目指すための財源となりました。
02|付知峡の不動滝駐車場周辺の混雑を緩和するLIVEカメラと協力金箱の設置
これまた中津川の三大観光地の一つである付知峡。付知峡の最も奥まった場所に位置する不動滝周辺にある駐車場へは、行楽シーズンには進入する車と退出する車があまりの混雑にすれ違いをすることもできず、多数の車が身動き取れない状態に陥ることが2回発生。解消のためには監視カメラを設置し、混雑がある程度始まってきたらその手前で遮るオペレーションの必要性が高まっていました。
150万円ほどのカメラ設置費用を捻出するため、2024年度に協力金箱を駐車場に置くというスキームを実施したところ、およそ年間200万円の収入を創出。遊歩道の整備など景観保全を担っている「付知まちづくり協議会」と「中津川市観光局」とに収入が分配される仕組みを作りました。
